本研究は, 援助行動と非援助行動における原因帰属の次元を検討した。本研究の主目的は, (1) 高木 (1983, 1986) の援助動機型, 松本・高木 (1981) や高木 (1987) の非援助動機型と原因帰属次元との対応性を明らかにすること, (2) 援助行動あるいは非援助行動における原因帰属次元間の相関関係を検討すること, (3) 援助行動と非援助行動との間における原因帰属次元の差異と関連性を検討することであった。被験者は, 高木 (1983) の援助動機項目と松本・高木 (1981) の非援助動機項目を, 4種類の原因帰属次元に沿って評定した。本研究で用いた原因帰属の次元は, Weiner (1979) の提唱した, 統制の所在, 安定性, 統制可能性の次元とAbramson et al . (1979) の提唱した一貫性の次元であった。 高木 (1983, 1986) の援助動機型, 松本・高木 (1981) や高木 (1987) の非援助動機型と原因帰属次元との対応性を明らかにするために, 各次元において各動機型得点を求めた。各次元内における動機型得点間の差異を検討したところ, 援助行動においても非援助行動においても各次元内の動機型得点間に有意差が認められた。これらの結果によって, 6種類の援助動機型 (高木, 1983, 1986) と5種類の非援助動機型 (松本・高木, 1981; 高木, 1987) を原因帰属次元より特徴づけた。 つぎに, 援助行動および非援助行動における原因帰属次元間の相関関係を検討したところ, 援助行動においても非援助行動においても, 安定性の次元と一貫性の次元との間にのみ有意な正の相関が認められた。この結果は, Weiner (1979) の提唱した3次元が, 援助行動の場合も非援助行動の場合も, 互いに直交しているが, 安定性の次元とAbramson et al . (1978) の提唱した一貫性の次元とが'援助行動の場合も非援助行動の場合も, 経験的レベルでは直交していないことを示した。 最後に, 援助行動と非援助行動との間における知覚された原因帰属次元の差異と関連性を検討した。まず, 本研究の結果は, 統制可能性の次元を除いて, 援助行動の場合と非援助行動の場合とで次元の重みが異なることを示した。すなわち, 非援助行動の場合が援助行動の場合より有意に内的・安定的・一貫的な方向に帰属されやすいことが明らかになった。つぎに, 両行動の原因帰属次元間の関連性を検討したところ, 両行動間の対応する次元の相関は, 統制の所在の次元, 安定性の次元, 一貫性の次元において有意であったが'統制可能性の次元は有意でなかった。統制可能性の次元間の相関が有意でなかったことは, 援助行動における意図の推測のパターンと非援助行動における意図の推測のパターンとが独立していることを示唆した。また, 援助行動と非援助行動に関する正準相関分析や冗長性の分析の結果は, 援助行動における原因帰属のパターンと非援助行動における原因帰属のパターンが, 1次独立な関係にあることを示した。