本研究では個人の中でどのような特性が自己図式に統合されやすいかを検討する目的で, EysencyのE特性次元とN特性次元を対象に, MPIでの反応とその特性に関する自己図式の有無の関係について検討した。 実験Iでは, E特性次元及びN特性次元でのMPIの得点によって被験者を群分けし, それぞれの特性の特徴を示した形容語の自己判断課題での成績を比較した。その結果, 反応内容はMPIの得点水準に対応した一貫性を示していたが, 判断の処理効率に及ぼす自己図式の効果について特性によって次のような違いが見られた。 1. E得点が高い被験者群ではE特性の自己図式の効果が認められた。しかし, E得点の分布が偏っていたために, E得点の低い被験者群でI特性が自己図式に統合されているかどうかは確認できなかった。 2. N得点水準はN形容語及び非N形容語判断の効率に影響を及ぼさず, N特性, 非N特性とも自己図式に統合されにくいことが示された。 実験IIではE形容語・I形容語の自己判断について日常的な形容語を利用して再検討すると共に, 他者判断についても検討を加えた。結果は次の通りである。 1. 自己判断においては, E形容語及びI形容語判断ともに自己図式の効果が認められたが, I特性は相対的にE特性より自己図式が形成されにくいことが示唆された。 2. 他者判断の場合, I特性よりE特性判断で判断が容易かつ速やかになされることが明らかにされた。以上の結果は, 特性の自己推論過程との関連で考察された。