1. 本研究は遅延選択反応課題の作業遂行過程において, 観察者の存在が被験者の自己呈示行動にいかなる影響を及ぼすかを検討しようとするものである。 2. 大学生67名が, 前半・後半とも一人で課題を遂行する単独群と, 後半だけは一人の観察者が存在する条件下で課題を行なう被観察群とに分けられた。 3. 課題は漢字1文字と数字1文字との対を4組記憶し, ある遅延時間後に, 呈示された漢字に対する数字を答えるという, 遅延選択反応課題である。選択反応後, 被験者は自分の反応に対する自信度を表明し, さらに反応の正誤をCRT上に表示するかどうかの選択をせまられた。 4. その結果, 観察者の存在は正反応数などには影響を与えなかったが, 自信度の回答時間を長くさせた。また公的自意識傾向を低下させた。 5. これらの結果は社会的促進の動因理論と情報処理自己呈示モデルから考察され, 公的自意識得点の低下は積極的自己呈示の技巧から解釈された。