本研究は, 後続逆宣伝に対する抵抗に及ぼす恐怖喚起コミュニケーション (FC) の効果を検討することを目的とした。後続逆宣伝への抵抗効果を解明するために提案した研究パラダイム (Table1) に従って, HFC群に対して強恐怖喚起コミュニケーションを, LFC群に対して弱恐怖喚起コミュニケーションを呈示し, 統制群に対してはコミュニケーションを呈示しなかった。そして, その1週間後に, 3群の被験者のそれぞれ半数に対して逆宣伝を呈示したが, 残りの半数の被験者に対しては逆宣伝を呈示しなかった。 得られた主な結果は次の通りである。 1) 逆宣伝を受けない場合, HFCは, LFCに比べて, FC呈示直後と1週間後の両時点で唱導方向へのより大きい態度変容を受け手に生じさせた。 2) HFCを先行呈示された場合は, 逆宣伝による態度変容が生じなかったが, LFCを先行呈示された場合は, 逆宣伝によるその唱導方向への態度変容, すなわち逆宣伝効果が生じた。 3) 統制群の逆宣伝効果を比較基準にとった場合, HFCは後続逆宣伝に対する抵抗効果を示したが, LFCはそうした抵抗効果を示さなかった。また, 後続逆宣伝への抵抗効果は, LFCよりもHFCの方が大であった。 4) HFCは, LFCに比べて, 呈示直後に脅威の危険性認知を高め, それを1週間後まで持続させただけでなく, 呈示直後に恐怖感情を高め, 1週間後に再び説得話題に接した時点でもより強い恐怖感情を引き起こした。 5) HFCは, LFCに比べて, 後続の逆宣伝の源泉の信憑性に対する認知を低下させ, 逆宣伝に対する反論を増加させた。 当初の予想通り, 逆宣伝への抵抗効果を通して, LFCに対するHFCの説得効果の優位性が実証され, そうしたHFCの説得効果の優位性が4) と 5) の情緒的反応および認知的反応の変化と対応していることが指摘された。