本研究の目的は, 社会的ジレンマ事態における集団間関係の研究法として, ゲームシミュレーションとしてのSIMSOCを導入することである。SIMSOCは6ゲーム実施した。それぞれのゲームでは, 約40名の大学生が4地域に配置された。4地域のうち2つの豊かな地域は主要な資源を支配し, 残りの2つの貧しい地域はわずかの資源のみを保有した。通貨交換可能条件の3ゲームでは, ゲーム終了時に各プレーヤーは自己の獲得した通貨を価値をもつ品物と交換できる。通貨交換不可条件の3ゲームでは交換はできない。 主要な結果は次の通りである。SIMSOCにおける地域間関係の展開は4つの段階にわかれた。各段階における地域間関係の主要な問題は, 各地域の組織化, 集団間対立と生計不足の解消, 公共財の供給, そして地域資産の蓄積あるいは地域間対立のエスカレートであった。 通貨交換可能条件では, 資産蓄積の個人目標が重視され, 地域の自己利益志向の行動が促進され, 地域資産の蓄積競争が盛んになった。通貨交換不可条件は, 権力獲得がより重視され, 地域の競争的攻撃的行動が促進され, 地域間対立がエスカレートして, 社会は崩壊した。 公共財の供給としての協同的行動では, 通貨交換可能条件と不可条件間で差異がみられなかった。また, 豊かな地域と貧しい地域は公共財供給において公平な負担をしていた。公共財の供給についての結果は, その行動が社会においてリーダーシップをとるための手段としておこなわれたことを示唆していた。