1. 本研究は選択反応課題の作業遂行過程において, 観察者の存在が被験者の作業成績, 自己評価反応, そして心拍数にいかなる影響を及ぼすかを検討しようとするものである。 2. 大学生36名が, 前半・後半とも一人で課題を遂行する単独群と, 後半だけは一人の観察者が存在する条件下で課題を行う被観察群とにランダムに分けられた。 3. 課題は漢字1文字と数字1文字との対を5組記憶し, ある遅延時間後に, 呈示された漢字に対する数字を答えるという, 選択反応課題である。選択反応をした後, 被験者は自分の反応に対して「正解」あるいは「マチガイ」いずれかの自己評価をするように求められた。 4. その結果, 観察者の存在は作業成績, 「正解」と自己報酬的に自己評価する比率などには影響を与えなかったが, 自己評価, 特に「正解」と自己評価する時の反応潜時を長くさせた。また瞬時心拍数が実験の進行とともに低下するのを抑制した。 5. これらの結果は社会的促進の動因理論と情報処理自己呈示モデルから考察された。