本研究は, 報酬分配行動を規定すると考えられる要因について, これらを多次元的な見地から検討することを目的とした。 まず予備調査において, 被験者は所与の分配行動場面でどのような場合にそこでの当事者達が衡平 (あるいは平等) 分配を行うことに同意できるかについて, 自由記述で回答した。本調査においては, 予備調査で得られた回答を60項目にスクリーニングして, 被験者に予備調査で用いた分配行動場面を呈示し, これらの項目の各々についてどれを満たせば衡平 (あるいは平等) 分配を行うことに同意できるかを, “ハイ”, “イイエ”で回答させた。本調査の回答はまず林の数量化理論第III類によって分析され, さらにこれらの項目間の構造を見るためにクラスター分析を用いて解析を行ない, 衡平分配条件と平等分配条件の各々についていくつかのサブグループを識別した。数量化理論第II類による分析の結果, 衡平ならびに平等分配に大きく寄与した項目 (衡平分配条件: 7項目, 平等分配条件: 9項目) を抽出した。 以上の分析結果から, 従来より行われた研究では触れられなかった作業の特性が報酬分配行動を規定する要因として重要であることが見出された。