本研究ではリーダーシップ・プロセス, とりわけリーダーシップ行動とアウトプット変数 (集団モラールおよび組織コミットメント) との関係に及ぼす感情的反発, パーソナル・パワーのモデレータ効果, メディエータ効果について検討した。調査対象は鉄鋼関連メーカーの従業員189名, 病院看護職員425名であった。得られた結果は次の通りである。 1. 従業員のリーダーへの感情的反発が強いほど課題達成行動とアウトプット変数の相関は低くなり, とりわけ圧力Pとアウトプット変数との関係は, 感情的反発の高い条件下で負の相関になった。 2. リーダーのパーソナル・パワーのモデレータ効果は, リーダーの圧力P行動とアウトプット変数との間で有効であった。また権限委譲行動と集団モラールとの関係においてもパーソナル・パワーは有効なモデレータ効果を示したが, 権限委譲行動と組織コミットメントとの関係においてはパーソナル・パワーはモデレータ効果を示さなかった。 3. リーダーシップ行動とアウトプット変数との関係においては, パーソナル・パワーは両者の仲介的役割, すなわちメディエーショナルな役割を果たしたが, 感情的反発ではそうした効果は小さかった。 最後に, リーダーシップ・プロセスにおけるモデレータ, メディエータの役割についての討論がなされた。