社会心理学における対人葛藤研究は, 問題解決を目的としたものが主流であり, その際に生じる心理的ストレスとその解決については十分な議論がなされていない。一方, 健康心理学においても対人葛藤はストレッサーとして想定されてはいるが, 多くのストレッサーのうちのひとつとして, その特殊性はあまり考慮されてこなかった。そこで本論文では, この2つの領域における対人葛藤とその対処方略の知見を概略的にレビューし, それらを統合した枠組みで研究を発展させることを提唱した。また, 同じく対人関係において生起しながらも, 精神的健康にポジティブな影響を与える変数であるソーシャルサポートと対人葛藤との関連についても考察した。さらに, ストレッサーとしての対人葛藤研究における今後の具体的な課題として, (1) ストレッサーとしての対人葛藤の影響力, (2) 対人葛藤対処方略のストレス低減可能性, (3) ソーシャルサポートと対人葛藤との関連などを挙げ, それらの課題を検証するための概念的なモデルについて考察し, ネガティブな影響を及ぼす対人関係を, 偶発性を含んだライフイベントと, 比較的安定した対人認知の一側面とに弁別する必要性を提唱した。