本研究は, いわゆる日本人論における「日本人らしさ」についてのステレオタイプを, 当の日本人はどのように捉えているのかを検討したものである。すなわち, 「日本人らしさ」のステレオタイプを「一般の日本人」については認めるにしても, 個々人に注目した場合には, それほどにはあてはまらないとするのではないかという仮説を検討した。まず, 代表的な日本人論の記述から2, 000項目を抽出し, これをもとに3ヵテゴリー45項目からなる「日本人らしさの尺度」を作成した。この尺度を用い, 大学生の男女226名に「一般の日本人」と「自分自身」の2評定対象についての評定を求めた。その結果, 「日本人らしさ」についての肯定度は「自分自身」についてよりも「一般の日本人」についてより高いという有意差が認められた。さらに, カテゴリー別には, 集団主義的傾向を記述したカテゴリーにおいて, 最も顕著な差が見出された。この結果に基づいて, 「一般の日本人」のレベルと個人のレベルの評定が異なる理由について考察した。