自尊感情は心理学におけるもっとも重要な概念の一つでありながら, これまで自尊感情とは何かという議論はあまりおこなわれてこなかった。本稿では, これまで明示的に示されることがほとんどなかった自尊感情に関する従来の考え方を探り, 伝統的な「自己」が現実世界の社会的状況や人間関係性から切り離され過ぎていたという問題点を指摘した。次に, 最近提唱されつつある自尊感情への生態学的・対人的視点をとったアプローチを紹介し, これまで整合性のある説明を与えられなかった点について, 新たな観点から議論した。最後に, 今後の研究課題と意義を提唱した。