報酬分配場面において, 分配者は, 多くの場合, 公正な報酬分配を行うよう動機づけられていると考えてよいであろう。本研究の目的は, 分配者による報酬分配の公正認知が低い場合に公正認知が高い場合と比べて, 言語メッセージの量が多くなり, なかでも, 被分配者にとって心理的報酬となるような内容の言語メッセージが多くなるという予測を検討することである。本研究では, 分配者による報酬分配の公正認知を, 被分配者の業績, 能力, 努力の量的相違と, 分配者-被分配者の交換関係継続の有無によって, 操作した。大学生122名が実験に参加した。実験の結果, 被分配者間に能力差がある条件の方が, 能力差が無い条件と比べて, 分配者による報酬分配の公正認知が低かった。また, これらの条件間で, メッセージの量に差はみられなかったが, 前者よりも後者の条件で, 被分配者にとって心理的報酬となるような内容の言語メッセージが多く観察された。さらに, このような言語メッセージの使用と公正認知との関連性が示唆された。しかし, 言語メッセージ使用による公正さの向上の程度は, 有意傾向であった。