1. 農業は植民地政策の影響により, モノカルチャー的となり, 伝統農法と近代農法の混合型である。 2. フランスの植民政策では, 不在地主的経営方法で, 小作民は次第に窮乏していった, 植民地政策とアウタキールとのギャップが大きい複合社会に, 民族主義も拡大しつつあった。 3. 農地改革は外来勢力のバックアップのもとに推進されたが, ベトコン対策の一環としての目的もあり, 地主資本家に有利寛大な方法で, 小作民は喜こばなかった。 4. 南ベトナムはフランスの収縮先端 (Verkümmerungsspitzen) 地域に変ったが, 地主小作関係は存在し, 村落でもコミュナリズムの影響が残存していると考えられ, 農業の後進性と従属性, 支配, 被支配的傾向をも温存せしめる結果となっている。 5. 農地改革は外部的圧力と, 住民の創意の貫徹されない状態で, その基底的目的からほど遠い表層的目的でおし進められたので, 目的や方法, その成果も不完全であった。 6. 南ベトナムは, 外来勢力の成長先端 (Wachstumspitzen) 地域であり, 諸外国施策の錯そうはもちろんのこと, 南ベトナムの真の姿と施策との矛盾が大きかったことも, 政治的破たんの一因子とも考えられ, 農地改革の面からも, 内紛的様相の一端がうかがえるのである。