1 トンキンデルタの低平な水郷的地域は, 人口稠密で水田の中心地域である。 デルタの南部は, 土砂堆積の発達した地域であるが, 東部のタイビン河下流は, 土砂運搬量が乏しいうえ, 地盤沈下も考えられるため, デルタは未発達である。 2 主な交通路線は, ハノイを中心に放射状に発達している。 小径は, 湿地や自然堤防・砂丘等の微地形構造に影響をうけて立地している。 北ベトナムの輸送では, 河川の交通路が主要な役割を演じ, 特にハノイ・ハイフォン間貨物の流通が多い。 3 デルタの河川は高い堤防で両岸を囲まれ, 長い間に天井川となった所が多く, 頂置層地域の小径は, 扇状地の同心円的等高線に類似したようなものも多いが, 水路は人為的に構築されたものが多い。 中位滞水地域は, デルタの前置と称さるべき地域で, 堆積物は微細で低く滞水しやすい。 道路の主なものは土盛したり, 堤防のうえに立地し, 小径は水田地域などの低湿地域において粗となっている。 水路は自由蛇行形態が多く不規則である。 4 西部輪中地域では, 古い堤防のため土砂堆積が少なく, むしろ下流部においてデルタが発達したために, 低湿地が生じ, 道路はほとんど堤防などの土盛上に立地している。 水路は自由蛇行の旧河道などを巧みに利用しているが, 人工的水路もあり混合形態を示している。 5 沿岸砂丘列地域では, 道路は砂丘の発展方向と同様, 同心円的に発達している, この傾向は, やはり水路にも現われているが, 水路はこの外に規則的に整然としている所も多く, 新開地であることを物語っている。 ソンタイビン地域では, 東南の河川下流に土盛上の道路が多くなっており, 水路は自然河川の著しい曲流をそのまま利用している。 6 洪水等による被害の生じやすい時期は, 7-8月頃であり, 地域的には中部滞水地域, 西部輪中地域がきわめて危険性があり, ついでソンタイビン下流地域と考えられる。 以上の時期と地域における堤防の占める重要性は十分に認識されなければならないと思う。