東京など大都市内部には住宅と工場の混在地域がひろがっている。住工混在は長らく土地利用の混乱と見做され, 工場追出しによる土地利用純化が強行されてきた。しかし, その結果, 都市内部の経済活動は停滞し, 環境改善も進んではいない。それは, これらの政策が, 詳細な実態調査結果を踏まえたものでなかったことに起因している。本稿は, 代表的な混在地域である東京都葛飾区の詳細な土地利用とその変化について分析するとともに, 代表的な街区の分析から混在地区の性格を明らかにしようとするものである。 1. 葛飾区は東京城東の代表的な混在地域である。1976, 81の両年次にわたり詳細な土地利用の実態と, その変化をメッシュ法を用いて明らかにした。その結果, 単一要素に利用される地域はごくせまく, ほとんどが住工の混在に性格づけられ, しかも混在地区が拡大していることが明らかになった。 2. 葛飾区に加え, 墨田区, 大田区の代表的街区を選び, 混在地区の実態を調査した。その結果, 借地上に立つ小規模工場が多く, 生産をめぐる関係が地域的に一体化していること。経営者, 従業者の職住が一体化しており, 工場, 住民とも現在地での居住, 営業の継続を希望していることなどの共通性が明らかになった。混在地区の多くは他の住民・サービス業者を含め, 職住一体のコミュニティー, いわば産業地域社会を形造っている。 東京の工業, 各地域の経済活動を活性化するためには, 産業地域社会の育成, 強化が必要であり, この方向は東京都や各区のマスタープラン, 産業政策の重要な柱の一つとなっている。