餡の基礎的研究としてその定義を定め,用い得る原料の範囲を明らかにし,製造法の改善と消化率の向上等について若干の示唆を得た。1. 形態学的に顕微鏡による観察を行つて各種の餡が個々単独な細胞粒子であること,及びその中に澱粉粒を数個乃至十数個包含していることを認めた。2.餡及び飴にならぬ食品について澱粉の糊化溶出試験を行つたが餡になるものは糊化溶出温度高く,特に小豆,白隠元豆,蚕豆は96℃4時間の後まで糊化溶出しなかつた。3.アルカリ及びペプシン処理により餡中の蛋白質含量を減少させると,糊化溶出の温度が低下し飴としての特性を失う様になつた。以上から飴の定義は「餡は個々単独な細胞粒子よりなり強靱な細胞膜と熱凝固性の蛋白質を含有し,加熱に当つても容易にその澱粉が糊化溶出しない澱粉性食品である。」ということが出来る。