戦後,油脂不足時代に国内油脂資源開発の波にのつて著しい発展をみた米糠油工業は昭和25年の統制廃止を境として再び逆境に立つに至つた。我が国の米糠油工業の歴史は近々20年であつて,この間苦難の道を辿り,基礎固まらざる中に現在に到づている。戦前戦後における生産量は次の如くである。 米糠油生産實績(單位屯) 我が国の米糠発生量は年間約60万噸であるから,米糠が一大油脂資源である事には異論のない所であり,現在逆境にあるとはいえ,農産加工の領域に於て常に考慮していかねばならない問題であろう。 元来完全に精製された米糠油は食用油として他の油に比し遜色のあるものではない。むしろこの油を常用している人々からはその風味を賞されている位である。処が実際にはこの油は採油から製品に至る工程に種々の問題があり,そのために評判を落している面が少なくない。以下之等の問題点に触れてみたい。