魚介類を生食する我国で, 夏期に多発する細菌性食中毒の代表的な原因菌である腸炎ビブリオの病原因子として注目される耐熱性溶血毒 (TDH) を取り上げ, 原因食品として知られるエビ, シラス干しおよび食中毒事例のないカキ中で産生される可能性を, 溶血活性を指標として検討した. エビ, シラス干しに本菌を濃厚接種 (約107/ml) した場合, TDHが産生されるのに対し, カキではTDHの産生は認められなかった. さらに, トリプシン, パンクレアチンをエビにあらかじめ作用させるとTDHの産生量が増大したので, 食品中のみならず,消化管内特に小腸でのTDH産生の可能性が示唆された. 食品中でのTDH産生ならびに消化酵素の関与を示した報告は今までになく, はじめてと思われる.