国内外産の原料大豆と市販豆腐における B. thuringiensis の汚染状況を調査するとともに, 原料大豆から豆腐を試作し, その製造・保存過程での B. thuringiensis の消長を検討した.その結果は以下の通りであった. 1. B. cereus/thuringiensis 菌数は国内外産の大豆とも, その多くが102cfu/g以下であり, 102cfu/g以上の菌数を有するものは外国産137検体のうち31%, 国内産43検体のうち14%であった.また, 豆腐試料については30検体のうち16%が102cfu/g以上の菌数を有していた. 2. B. thuringiensis は180検体の大豆試料のうち39検体から検出され, 7, 5a5b, 3a3b3c, 11a11c, 22を含む14種の血清型が型別された.外国産大豆では137検体のうち29検体が7, 5a5b, 11a11c, 3a3b3c, 5a5cをはじめとする12種の血清型を有し, また国内産では43検体中10検体が22, 3a3b3c, 4a4d, 6a6c等の6種の血清型を有していた. 3. 豆腐については3検体から, その浸漬水については2検体から, 血清型3a3b3cのみが検出された. 4. 各試料から分離された各血清型の B. thuringiensis 菌株の下痢毒および推定嘔吐毒産生能はいずれも弱かった. 5. 原料大豆に下痢毒産生性の B. thuringiensis , Kurstaki (3a3b3c) の芽胞を接種して作製した豆腐には若干の B. thuringiensis が持ち込まれることを示した.また, この豆腐を種々温度下で保存した場合, 4℃では48時間まで B. thuringiensis の増殖は認められず, 20℃では6時間までは増殖しなかったが, 24時間後には急速に増殖することを示した.また, 30℃で保存した場合には保存後から徐々に増殖し, 48時間後には108cfu/gを超え, 豆腐に下痢毒が確認された.