平成3年10月と平成6年10月に, 患者の症状, 潜伏時間, 細菌検査結果, 他の病因物質の可能性などから判断して, 黄色ブドウ球菌によると推定される食中毒事例を1例ずつ経験した.原因食品は, 前者の事例では赤飯おにぎりであり, 後者では幼稚園の昼食に提供されたサンドイッチであった.両事例とも, 患者便および食品残物から高頻度に黄色ブドウ球菌が分離されたが, それらはすべてRPLA法およびPCR法のいずれでもエンテロトキシン (A~E) 産生性が認められなかった.したがって, 両事例は既知エンテロトキシン (A~E) 以外のエンテロトキシンを産生する黄色ブドウ球菌による食中毒事例であろうと推定された.