1,165件の食品から, それらを汚染している大腸菌群を検出・分離し, 441の分離菌株を得た.そしてこれらを従来法で使用する培地 (乳糖ブイヨン培地) および3種類の発色酵素基質培地 (コリラート, フルオロカルトLMXブイヨン, X-GAL寒天培地) に接種した場合の検出感度を中心に比較検討することで, 発色酵素基質培地法の評価を試みた. 3種類の発色酵素基質培地間では検出結果に大きな差はなく, かっ従来法と発色酵素基質培地法との間で判定結果は81.2%が一致した.また, 検出に必要な接種菌量については, 102cfu以上で検討しても検出結果にほとんど影響ないことから, 100~101cfu程度で十分であると考えられる.一方, 各培地での判定結果と菌種との関係については, 判定結果が不一致の事例に関与していた菌種として Enterobacter 属と Serratia 属が, また, 接種菌量の増加により判定結果が陽性に転ずる事例においては Enterobacter 属が多く検出される傾向があった. 以上, 今回の実験系においては, 発色酵素基質培地法による大腸菌群検出はいずれの培地でもおおむね良好な成績が得られた.ただし, ごく一部の菌種では判定結果が一致しないことがあるので若干の注意を要する.発色酵素基質培地法は特に迅速性において優れていることから食品分野の大腸菌群検出法として有用な方法であると考えられる.