腸炎ビブリオ, 黄色ブドウ球菌およびサルモネラによる食中毒の発生に及ぼす気象要素の影響を明らかにするために, 1981~86年および1978~91年の両期間別に, 東京都の毎日のこれらの食中毒の発生の有無を相的変数とし, 7気象要素 (最高, 最低および平均気温, 蒸気圧, 最低および平均湿度および日射量) を説明変数とする多重ロジスティック分析を行った.それぞれの気象要素は, 食中毒発生日, その1日前, 2日前および3日前別に両期間に分けて実施した.なお, 7気象要素は因子分析により, 気温・蒸気圧因子 (最高, 最低および平均気温と蒸気圧と正に関連) および湿度・日射量因子 (最小および平均湿度と正に, また, 日射量と負に関連) の2因子に要約された. 腸炎ビブリオ食中毒の発生は, 両期間ともその3日前の最低気温 (気温・蒸気圧因子) と有意な正の関係があった (多重ロジスティック分析).同様に, 黄色ブドウ球菌食中毒の発生は両期間ともその3日前の気温・蒸気圧因子と有意な正の関係があった.サルモネラ食中毒の発生は, 両期間に共通して有意な関係がある気象因子は見いだされなかった. 以上より, 腸炎ビブリオおよび黄色ブドウ球菌による食中毒発生には, いずれもその3日前の気温・蒸気圧因子が有意な影響を及ぼすと考えられた.