提示する項目間の質的に異なる意味的関連性が聴覚的理解課題に及ぼす影響について検証した。対象は35 名の失語症者と統制群としての健常者10 名で, 目標項目と同時提示する5 つの選択肢について, 目標語に対しての「状況関連性」と「カテゴリー関連性」の2 種の意味的関連性を操作した「音声単語と絵のマッチング課題」を作成し実施した。課題は全27 問で, 各問の選択肢は目標項目に対し, 状況およびカテゴリー関連性のある1 項目, 状況またはカテゴリー関連性のある各1 項目, いずれの関連性もない 2 項目から成る。結果, 失語群は統制群より有意に成績が低かった。エラーの分析では, 軽度失語群では状況関連性のあるエラーのみがみられ, 中等度失語群ではカテゴリー関連性だけのエラーも出現し, 重度失語群では状況・カテゴリーとも関連のないエラーが出現した。失語症者の理解課題の成績には, カテゴリー関連性だけでなく, 状況関連性も影響を及ぼすことが明らかとなった。