脳出血による左頭頂葉の損傷後,空間関係の言語的理解に障害を来たした症例を経験した。症例は,前後左右などの言語理解は良好で,それらを言語的に表現できるにもかかわらず,複数の対象の空間関係を言語的に理解することができず,また親戚などの続柄の関係の言語的理解が困難という症状を示した。空間操作能力を評価し,分析したところ,心的空間内のイメージを操作するために必要な視点の変換,対象中心座標系に障害が認められた。本例の空間関係の言語的理解の障害は,主に空間認知機能の一つである,心的空間内のイメージ操作に関連する神経基盤の低下に起因する可能性があると考えられた。