目的 本研究は、国際看護学実習前後での学生の意識の変化を明らかにすることを目的とした。さらに、看護基礎教育における国際看護学実習の意義および国際看護学実習の教育効果と課題を検討した。 方法 途上国での1週間の実習を含む 国際看護学実習を必修科目として実施する国立看護大学校の4年生101名を対象に、国際看護学実習前後で無記名自記式質問紙調査を実施した。数量データは因子分析後に実習前後で比較し、記述データは意味のある内容ごとにカテゴリーを抽出し分析した。 結果 実習前66部(回収率71%)と実習後23部(回収率25%)の回答を得た。国際看護学実習に関する意識では【国際看護への関心】【国際看護に必要な知識】【国際看護の特徴の理解】の3因子が抽出され、【国際看護に必要な知識】が実習後に高くなった。国際看護学実習が将来の自身の看護活動に有益だと思う学生の割合は高く、その理由として、実習前は«自己の内面的な成長»«国際的な視野の醸成»«看護の対象理解の深化»«看護観と看護活動の幅の拡大への端緒»であったのに対し、実習後は«自己の内面的な成長»«国際的な視野の醸成»«看護の対象理解の深化»«看護活動の幅の拡大への端緒»に加えて«看護の本質追及への興味»を形成した。国外実習への期待とその達成では【人間性の成長】【現場に行くことで実感できる経験】【国際看護活動実践へのきっかけ】【日本以外での生活体験】の4因子が抽出され、【現場に行くことで実感できる経験】が実習後に高くなった。国外実習への不安では【環境】【個々のもつ能力】【国外実習に付随する不可避なこと】の3因子が抽出され、【個々のもつ能力】と【国外実習に付随する不可避なこと】が実習後に低くなった。国外実習の準備では【実習目標達成の基礎となること】【実習目標達成のために必要なこと】【看護の知識と技術】【国外での実習遂行に必要なこと】の4因子が抽出され、【看護の知識と技術】が実習後に低くなった。 結論 国際看護学実習は、学生に蓄積された国際看護学の基礎的理論的な知識を具現化する効果的な教育方法のひとつで、看護基礎教育で学ぶ看護の本質や看護のあり方を効果的に経験でき、国際性の育成のための早期体験(early exposure)としての役割を有していた。さらに、学生のレディネスや、実習に対する不安の根拠を早期に把握し、適切な対応をすることによって学習成果のさらなる向上につながることが示唆された。