本研究では, 大学の講義型授業において使用されているリアクションペーパー(以下 RP)に着目し, 授業者の働きかけとRP記述の関係について検討を行った。まず, 予備調査を実施し, 学生が「RPをどのようなツールとして捉えているか(RP観)」に関する質問紙尺度を作成した。その結果, 学生のRP観としては, 「内容記憶志向」, 「記述訓練志向」, 「理解度伝達志向」, 「私的交流志向」の4因子が抽出された。次に, 本実験として, 1)授業者以外の読み手に, 自分の記述が読まれることを予期させる「読み手追加予期介入」と, 2)授業者が学生の記述した質問に対して補足説明を行うなど, RPの内容をいくつか抽出して応答を行う「授業者応答介入」を2つの大学で実施し, その効果を比較検討した。その結果, 授業者応答介入は用語の確認などの「低次質問」を抑制し, 授業内容をさらに深める「高次質問」の記述を促進することが示された。ただし, RP観との交互作用を検討した結果, 内容記憶志向の高い学生に対しては, 低次質問の抑制効果は見られないことが示された。一方, 高次質問の促進効果は, 私的交流志向が極端に高い学生を除き, 多くの学生に見られることが示された。