本研究では, 大学入試場面における競争の機能を高校生がどのように捉えているか, すなわちどのような受験競争観を有しているかについて検討を行った。また, 受験競争観によって学習動機や受験不安, 学習態度がどのように異なるかを検討した。まず予備調査を実施し, 受験競争観尺度を作成した結果, 受験競争観には, 心身の消耗や学習意欲の低下, 友人関係の悪化といった「消耗型競争観」と, 自己調整能力や学習意欲の向上, 友人関係の親密化といった「成長型競争観」の2つの側面があることが示唆された。そして高校2年生576名を対象に本調査を行った結果, 高校生は消耗型競争観よりも成長型競争観を強く有しており, 大学入試における競争をそれほど否定的には捉えておらず, むしろ肯定的に捉えている可能性が示唆された。さらに, 消耗型競争観を強く持つ学習者ほど外的な学習動機や受験不安が高い一方で, 成長型競争観を強く持つ学習者ほど学習の価値を内在化し, 受験を乗り越えるためだけの学習を取らない傾向にあることが示された。これにより, 大学入試における競争が学習者に与える影響は, 受験競争観によって異なることが示唆された。