子どもが大人との共同の中で, 相手が行った行為に関して「その行為を行ったのは自分だ」と誤って帰属する現象(自己への誤帰属)がある。この現象の生起は, 大人との共同を通じて起こる学習と共起関係にあると指摘されているが, どのようなやりとりを行ったときに自己への誤帰属が起こるかは明らかになっていない。そこで, 本研究では, 自己への誤帰属とやりとりの内容との関係を明らかにするために, 絵本を用いた共同読み活動を行う実験を設定し, 子どもと大人のやりとりにおける発話ならびに発話連鎖を分析した。分析1では, 発話の特徴と自己への誤帰属との関係について検討し, 子どもが独自の解釈を展開する発話「ファンタジーの展開」と「沈黙回数」が多いやりとりでは自己への誤帰属が生起しにくいことを明らかにした。また分析2では, 自己への誤帰属が起こりやすかったやりとりと起こりにくかったやりとりを抽出し, そこでの大人の働きかけの内容ならびに, その働きかけに対する子どもの応答について検討した。結果, 大人の働きかけが登場人物の気持ちに関するもので, それに対して子どもが具体的に応答していたとき, 自己への誤帰属が多くなることが分かった。