本研究の目的は, 友人・親・教師に対する評価懸念を測定することができる対象別評価懸念尺度を作成し, 信頼性および妥当性を確認した上で, 適応指標との関連を検討することである。研究1には, 小学校高学年および中学生585名が参加し, 友人に対する評価懸念, 親に対する評価懸念, 教師に対する評価懸念の3下位尺度からなる対象別評価懸念尺度が作成され, 一定の信頼性と妥当性が確認された。研究2では, 小学校高学年および中学生1,226名を対象に重回帰分析を行った。その結果, 各対象別評価懸念によって適応指標との関連は異なっており, 特に, 「友人に対する評価懸念」が幅広い不適応問題と関連を示していた。さらに, 男子において「教師に対する評価懸念」は学級での反社会的傾向を抑制する働きを持つことが示唆され, 対象別評価懸念が持つ適応的な側面が実証的に明らかにされた。したがって, 対象別評価懸念を低めることが必ずしも適応の実現にはつながらないことが考えられた。