ステレオタイプ抑制後にはステレオタイプのアクセスビリティが増加するリバウンド効果が生起する。これまでの抑制研究では,スキンヘッド男性のような少数派や高齢者のような地位が低いとみなされる対象に関する抑制が扱われてきたが,本研究では嫉妬的ステレオタイプを抑制した後のリバウンド効果について検討した。ステレオタイプ内容モデルによれば,我々は成功した外集団に対して有能だが冷たいとみなすことがある。ただし,そうした対象をいつも冷たいとみなすわけではなく,特に競争意識を知覚した時にネガティブな特性が顕現的になることが示されている。そこで,本研究では,抑制対象に対する競争意識の知覚がリバウンド効果の生起を調整することを検討した。参加者はキャリア女性(実験1)もしくはエリート男性(実験2)が他者と働いている場面を記述した。その際,半数の参加者にはその人物の冷たいというイメージを抑制するよう教示し,半数にはそういった教示は与えなかった。その後,ステレオタイプのアクセスビリティを測定した。実験の結果,抑制対象に競争意識を感じやすい場合にはリバウンド効果が生起し,感じにくい場合にはリバウンド効果が生起しなかった。ステレオタイプ抑制を対人認知の観点から検討することの意義について考察した。