過疎地域の活性化を図る上で,地域の自然資源を活用した地域づくりを進める取り組みは重要である。本研究は,その先進地域として知られる岩手県葛巻町を対象として,地域づくりにおける人的ネットワークが果たす役割を社会ネットワーク分析によって明らかにした。現町長および前町長が任期中のネットワークをみたところ,二時期ともに町長はネットワークの最も中心に位置しており,リーダーシップを発揮しているアクターであると考えられた。ネットワークの中心部分を把握したところ,町長に加えて,副町長,第三セクターおよび森林組合に所属するアクターによって構成されており,町長のリーダーシップはこれらの地域のリーダーたちの壁を越えて横断する凝集性の高いネットワークによって支えられていた。また,この密なネットワークは現町長,前町長の二時期に渡って維持されており,結束型ソーシャル・キャピタルを醸成していると考えられた。一方,ネットワークの中心部分は,町内にとどまらず町外関係者とも多くのネットワークを形成しており,外部から様々な資源を入手するための橋渡し型ソーシャル・キャピタルとして機能していると考えられた。