津波を受けた海岸防災林では海水浸水により大量の塩類が土壌に付加され集積したため津波による物理的破壊被害以外にも樹木の針葉変色・萎凋,衰退・枯死など塩害症状が東北太平洋沿岸で発生した。津波浸漬土壌は除塩する必要があるが,森林を対象とした除塩の実施はその立地条件等から困難であり,梅雨や台風など自然の降雨に期待せざるを得ない。本研究では宮城県仙台湾沿岸(吉田浜)と青森県太平洋岸地域(市川)において津波被災海岸防災林の土壌を対象に降雨による除塩効果を評価した。被災後約1年で堆砂層を中心に除塩が進み,pH(H2O)や交換性Ca2+,K+含量は低下した。EC や交換性Mg2+,Na+など,一部の層位,特に市川の2A 層では,時間の経過とともに値の上昇傾向が認められた項目もあったが,これは降雨による堆砂層から下層への塩の移動を反映したと推察された。以上から,海岸平坦面にある海岸防災林の砂質未熟土でも,時間の経過とともに津波浸漬に由来する土壌中の残留塩類は降雨に伴う自然排水によって移動,流去し土壌における津波影響の痕跡は低減されたことが明らかとなった。