本研究では三重県大台町の管理不足人工林を対象に,林業適地の抽出を視野に,立地環境分析によってスギノアカネトラカミキリによる材質劣化被害と立地環境,および林地生産力を指標する成長との関係を把握した。スギノアカネトラカミキリの被害程度は現地調査によって樹幹解析用に採取した円板をもとに,元玉,二番玉の製材可能性を基準に判定した。成長の指標には優勢木,介在木の 40年生時の樹高と胸高直径を用いた。解析の結果,スギ林は堆積様式が残積土で凸斜面の場所で被害が大きく,成長が良い立地環境ほど被害が少ないことがわかった。一方,ヒノキは堆積様式が崩積土で被害が多く,表層土粒径が粘土質の場合に少ない傾向がみられた。また成長との関係は不明瞭であった。このことから,スギは堆積様式が崩積土で凹または平衡斜面の水分条件が良く成長が良い立地環境が,ヒノキは植栽される傾向にある斜面上部の中でも粘土質の立地環境が適地であると考えられた。これらの環境は各々の自然立地環境や古くから適地とされている環境であり,収穫後の再造林にあたり適地適木が図られれば,被害を軽減できる可能性が示された。