東京電力福島第一原子力発電所事故から2年間(2011~2013年),福島・茨城県の計5カ所で樹木地上部の放射性セシウムの濃度と蓄積量を調査し,林冠から林床への移行過程と優占樹種の関係を検討した。調査地は,スギ4林分,ヒノキ2林分,アカマツ1林分,落葉広葉樹(コナラ優占)1林分の計8林分である。各林分では,毎年優占種3個体を伐倒し,葉・枝・幹(樹皮・辺材・心材別)の採取試料で放射性Cs濃度を測定し,その平均値を現存量に乗じて林分の放射性Cs蓄積量を推定した。既報のリターや土壌の測定結果も加えて検討したところ,林分の137Cs総蓄積量に占める樹木の割合は,いずれの林分も2年間で大きく減少したが,2013年の割合はスギ林(6~24%)やヒノキ林(10~12%)がアカマツ林(2%)や落葉広葉樹林(3%)より高かった。また,葉の137Cs濃度や蓄積量の経年変化は,同じ常緑樹でもスギ・ヒノキとアカマツとでは異なった。事故後初期の枝葉の枯死に伴う林冠から林床への放射性Csの移行過程は,林冠の初期沈着量とともに,優占樹種による葉の寿命や葉量の違いによって異なることが示唆された。