東京電力福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウム137 (137Cs) の福島県内のモウソウチク林における分布を明らかにするため,2012年5,6月に,事故前後に発筍したタケの稈,枝,葉,地下茎,タケノコを採取した。また2014年4月に経根吸収の実態を把握するため,深度別土壌と地下茎,および土壌表層と下層に伸びる地下茎根を採取した。2010年以前発筍稈の節部には放射性物質が高濃度で強固に付着しており,2012年時点で,降雨で洗脱されずに地上部に残留していることが明らかとなった。また,事故前後に発筍した稈の各器官中の137Cs濃度は同程度であった。このことから,137Csは地下茎を介した転流等によって拡散し,2011年発筍稈に含まれる137Csの起源として,フォールアウトの影響を受けた成竹からの転流と事故直後の可給態137Csの経根吸収の関与が示唆された。一方,地下部において137Cs濃度が地下茎の深さや根の方向に関係していないことから,現時点では137Csの経根吸収は少ないことが推測され,事故直後に吸収された137Csが地下茎を通して竹林全体に拡散していることが考えられた。