森林に降下した放射性セシウムの林冠から林地への移行の動態と,森林の違いがこれに及ぼす影響を明らかにする目的で,東京電力福島第一原子力発電所事故後の2012年10月から2013年12月まで,福島県内のアカマツ林と落葉広葉樹林においてリターフォールと降水に含まれる137Csの観測を行った。林冠から林地への137Csの移行には季節性があり,優占樹種の落葉期,降雨の多い時期にそれぞれリターフォールと林内雨を通じての移行量が増加した。森林の構成樹種,立木密度が異なると,リターフォールと林内雨・樹幹流の量およびそれらの137Cs濃度が異なり,林地への137Cs移行量に違いを生じた。2013年の林地への137Cs移行量は,アカマツ林が2,457 Bq/m2(うち樹幹流41,林内雨134,リターフォール2,281),広葉樹林が4,032 Bq/m2(うち樹幹流213,林内雨 600,リターフォール 3,219)で,いずれの森林でもリターフォールの寄与が最も大きかった。事故直後に森林の表層に沈着した放射性セシウムは,森林内を徐々に拡散しながら樹体内に取り込まれ,事故後1.5年を経た時点では森林のミネラル循環に入っていると考えられた。