本研究の目的は, 発達段階を考慮した環境教育の目的の整理と現状での森林環境教育の実施状況の分析から, 効果的な森林環境教育のあり方を論じることである。森林環境教育の実態を把握するために, 各都道府県で行われた2009年度と2010年度の森林環境教育の162の実践例をまとめた林野庁の事例報告を用い, 森林環境教育の実施の対象者, 目的, 実施内容, 課題に関する語句の抽出と集計を行った。その結果, 森林環境教育の対象者は, 主に児童であり, 実施目的は森林・林業に関する知識・理解・啓発に関するものが103件と他の目的と比べて多かった。実施内容は, 観察 (観測) (73件), 木工 (71件), 間伐 (42件), 植樹 (33件) 等の体験型が多かった。森林環境教育は主に児童を対象に, 森林・林業に関する知識・理解を深めるために体験学習させることと捉えられている可能性がある。このように, 森林環境教育の対象者, 実施目的, 実施内容に偏りがあることから, 最終目標の「参加」につなげるためには青年期以上の対象者向けの実施を増やし, 発達段階にあわせた目的と内容で実施していく必要がある。