高電圧パルス電界印加法は,非加熱殺菌の1つの手法であり実用化に向けて研究されており,殺菌効率の向上のために,電極槽の改良が検討されている.一方,銀は抗菌効果が古くから知られている金属である.今回の研究では,銀ワイヤをスパイラル電極に用いた高電圧パルス処理装置を作成し,大腸菌に対する殺菌効果を検証した. ステンレス電極を用いた場合,電圧無印加では殺菌効果はなく,電圧を上げるにつれて大腸菌の生菌率が下がった.銀を高電圧側の電極に用いた場合,パルス印加により高い殺菌効果が得られた.これはパルス付加による効果と銀による効果の相乗と考えられた. アース側に銀電極を用いた場合,銀の溶出がおさえられたが,ステンレス電極を用いたときよりもパルス付加による殺菌効果は高く,またパルス付加による殺菌時間の短縮効果がみられた. 硝酸銀溶液または,パルス付加により銀電極から溶出させた銀溶液を同濃度に希釈した試験溶液に大腸菌を懸濁し,ステンレス電極でパルス付加したところ,電極から溶出させた銀溶液中のほうが,パルス付加による殺菌効果が大きかった.このことから,パルス付加と同時に銀イオンが発生することが殺菌効果の向上につながっていると考えられた.