食料価格の高騰が始まり,その原因の1つが食料系バイオマスからのバイオエタノールの生産であるといわれている.それを避けるべく,生産を森林などから新たな耕地を開墾するとすれば,もともと二酸化炭素排出削減を目指したことが,逆効果になりかねない.これらのことを,バイオエタノール生産を,既存の耕地で行う場合と,新たに開墾した耕地で行う場合について,既存のデータや統計的データなどを使って考察した.既存の耕地を使った場合,人の使用するガソリンは膨大な量であり,年間生産される全世界の穀類を全てエタノールに変換してもその量はガソリンに対して約43%,日本では5.5%にしかならず,食料価格に影響がでることが必至であることが示された.また,開墾した場合には,開墾時の大量の二酸化炭素排出により,排出削減効果は数10年から数100年のオーダーの後にしか現れないことが示唆された.