糖などの炭水化物からなるアモルファス材料は高い吸湿性を有しており,収着した水は材料の物理化学的特性に少なからず影響を及ぼす.これまでに,糖類からなるアモルファスマトリクスの水分収着特性に関して多くの研究がなされてきた.しかし,それら既往の研究のほとんどは,暗に全ての収着水分子は単一の収着状態にあるという前提に基づいている:アモルファス状態では分子はランダムな配向でランダムに位置しており,水分収着状態も複数以上存在するものと考えられる.近年,著者等はFourier変換赤外分光分析とFourier self-deconvolution処理を組み合わせることにより,収着水を異なる状態ごとに分離・定量した.その結果,収着水には5つの収着状態が存在し,その内の3つの状態の収着水が“ガラス転移温度の低下”を引き起こしており,残りの2つの収着水はマトリクスの物理化学的特性にはほとんど影響しないことを明らかにした.