乾燥食品のガラス転移温度( T g)は示差走査熱量計(DSC)によって明らかにされる.しかし,様々な成分が混在した加工食品の場合,DSC曲線は極めて複雑な挙動を示すため, T gは不明瞭となる.筆者らはレオメーターに温度制御装置を取り付けることによって試料に一定荷重を加えた状態で等速昇温可能な測定システム(昇温レオロジー測定)を構築した.これは熱機械測定の原理に基づくものであり,ガラス転移に伴う軟化を捉えることができる.本研究ではモデルとして非晶質イヌリンを用い,DSCによって明らかにされる T gと昇温レオロジー測定によって明らかにされる軟化温度( T s)との関係を調べ,両者は良好な正の相関を示すことを明らかにした.また,これまでに T gに関する報告が殆ど無かったクッキーを対象とし,昇温レオロジー測定によって軟化を明確に捉えられること,得られた T sは含水率の増加と共に低下することなどを明らかにした.