小説を読む場合には,しばしば裏表紙などに書かれた紹介文を参考として図書を選択することが行われる。しかし実際には,紹介文を読んだ時に期待したものとは異なる感想を持つ結果となることも少なくない。このような齟齬の原因としては,小説に対する感想の個人差がある場合のほか,読書前後で図書に対して注目する観点が異なることも考えられる。本研究では,読書前にこのような感想を持つだろうと予想して作成された文章と,読書後に実際に作成された文章(感想文)との比較を行い,読書前後で観点が変化するかどうかを調査した。10冊の小説を対象として読書前後に作成された文章の中に出現する語の品詞や意味の種類の分析を行ったところ,出現する語の品詞や意味の種類は読書前後で共通であり,読書前後での観点そのものには大きな違いはないことが明らかとなった。