タンパク質・エネルギー栄養障害時にはしばしば貧血が認められ, 主な原因は鉄欠乏と考えられている。近年, 鉄代謝の解明が進み, ヘプシジン-25が鉄代謝の中心的役割を果たすことが明らかになった。これまでに, ヘプシジン-25と栄養状態の関係についての報告はない。そこで, タンパク質・エネルギー栄養障害時にみられる貧血とヘプシジン-25との関連について, 成長期の無タンパク質食摂取ラットを用いて検討した。さらに, 無タンパク質食への鉄配合の有無が鉄代謝に及ぼす影響についても検討した。その結果, 成長期のタンパク質・エネルギー栄養障害時にみられる貧血の原因は絶対的鉄欠乏ではなく, ヘプシジン-25産生亢進による鉄代謝阻害, すなわち鉄の利用障害である機能性鉄欠乏と考えられた。タンパク質・エネルギー栄養障害時には蓄積鉄は増加し, 鉄補給なしでも鉄欠乏にはならず, 安易な鉄補給は鉄過剰を招く危険性がある。病態の改善には, 栄養状態の回復が最善の解決策である。