近年,TCP (Transmission Control Protocol)を利用するストリーミングサービスの普及とともに,安定したデータ伝送を実現するために可用帯域を正確かつ短時間に測定することがますます重要となってきている.そこで,我々はソケットAPI (Application Programming Interface)を備えるTCPのリアルタイムな可用帯域測定機能を提案する.提案機能では,TCPコネクションをプロトコルスタック内部で観測し,ACK (Acknowledgement)パケット受信時刻に基づく測定手法により,TCPのスループットを損なうことなく可用帯域を推定する.これにより,(1)試験用のダミーパケットを要しないためネットワークに無用な影響を与えずに測定可能とし,(2)ネットワークの混雑等によって生じるACKパケットの受信時刻のゆらぎを考慮して測定に必要な確認応答パケット数を決定するため,測定精度を維持しつつ,リアルタイムに測定値を更新できる.また,本機能はソケットAPIを備えており,アプリケーションはソケットAPI経由で測定値を利用できる.これらの可用帯域測定手法を提案するだけでなく,TCPプロトコルスタックへ実装し,実験ネットワーク上で既存の可用帯域測定専用ツールとの比較を行った.その結果,従来の代表的な可用帯域測定専用ツールと比較しても同程度の精度で測定が可能であることを確認した.実装規模は300行程度と小規模ながら,本機能の効果が高いことが分かった.