本論文では,メモリ保護が必要な組込みソフトウェアの開発を支援するコンポーネント技術HR-TECSについて述べる. HR-TECSでは,組込みソフトウェア向けのコンポーネント技術であるTECSを拡張することで,メモリ保護を考慮した組込みソフトウェアのコンポーネントベース開発を可能とし,メモリ保護機能を持ったリアルタイムOSの機能を利用して,メモリ保護機能を実現する.また,コンポーネント間の通信について,個々のコンポーネントにおける通信APIの記述は,それらのコンポーネントが配置される保護領域に依存せず,共通のAPIで開発できる.さらに,HR-TECSは,非特権モードで動作するアプリケーションだけでなく,特権モードで動作するデバイスドライバなどの開発にも利用できる.本論文では,メモリ保護機能を持ったリアルタイムOSであるTOPPERS/HRP2カーネルを利用した場合のHR-TECSの実現方法を示し,評価実験により,HR-TECSを用いることによって生じる実行時間のオーバヘッドが小さく,かつ,予測が可能であること,および,メモリ使用量のオーバヘッドが小さいことを示す.