はじめに粉末魚油の調製条件を確立した.調製した粉末魚油の脂質含量は74 %と高く,現在市場に出ている植物油脂を使用した粉末油脂の脂質含量(70〜75)%に匹敵した.本研究で調製した2種の粉末魚油(FPO-1670とFPO-170, 1670)には,DHAが152mg/g,EPAが41mg/g含まれていた.次いで,DSCやHS-GC分析,過酸化物価の測定により,FPOに対して,粉末魚油(FPO-1670とFPO-170, 1670)の酸化安定性の向上を確認した.さらに,水と人工胃液および有機溶媒中への溶出試験によって,粉末魚油の徐放性を確認した.すなわち,酸化安定性と徐放性を備えた粉末魚油を調製した.この摂取により,DHAやEPAは消化管から穏やかに吸収され,これら脂肪酸の健康機能を効果的に享受できると期待された.この証明に向けて,現在,ヒト試験を進めており,ヒトにおける徐放性が明確となれば,本徐放性粉末魚油は多種多様な食品や加工食品に活用できると期待された.