高齢者の咀嚼能力を画像処理を用いて評価する方法を提案し,76人から成るパネルと,寒天と餅の2種類の検査食を用いてテストした.15秒間の咀嚼の後吐き出された試料の破砕片のサイズの分布を画像処理技術を用いて求め,この分布から,画像の目視による咀嚼結果の評価を最も正しく反映する各食品に対する指標を導出した.その結果,パネルの2つの食品に関する咀嚼能力には強い相関があるものの,寒天にくらべて餅の咀嚼がより困難な被験者がいることがわかった.各被験者の2つの食品に関する咀嚼状況は,被験者の属するアイヒナーグループ,および可撤性補綴物を除いた残存歯数と強く関連することがわかった.このことは被験者に義歯の転覆がおこっていることを示唆する. 評価指標導出の恣意性を除く目的で,健全な個体の咀嚼破砕片サイズ分布からのずれによって咀嚼能力を評価する事も試みた.また,過去に行った,試供食品にグルコースを混ぜておき,唾液中に分泌されたグルコース量から咀嚼能力を評価する簡易な方法についても評価を行った.