抄録 目的: 深夜勤務を伴う不規則な交替勤務に従事する労働者の深夜勤務後の疲労回復に関連する要因について検討すること. 方法: 福島県に本社をおく鉄道会社の従業員を研究対象とした.対象となる会社は旅客運送を行っており,乗務員など多くの従業員が,毎日就業時間の異なる不規則な交替勤務に従事している.2011年10月に従業員89人に自記式質問票による調査を行い,回答が得られた84人のうち,9月の1ヶ月間に深夜勤務(深夜0時をまたぐ勤務)に従事した男性52人を調査対象とした.深夜勤務後の疲労回復は質問票で「深夜勤務による疲れは,どのくらいで回復しますか」と質問を行い,「疲れを感じない」,「翌日に回復する」,「2,3日で回復する」「それ以上」からの選択とした.選択肢を「疲れを感じない」,「翌日に回復する」と「2,3日で回復する」「それ以上」の2群に分類した.疲労回復に関与する要因として年齢,肥満度(BMI),平日の平均睡眠時間,深夜勤務前の仮眠の有無,生活習慣病リスク (高血圧,脂質異常,糖尿病) の有無,生活ストレス蓄積の自覚,運動習慣の有無についての質問を行い,回答を得た.統計処理は,年齢,肥満度,睡眠時間についてはstudentの t 検定にて平均の比較を,仮眠,生活ストレス,運動習慣については χ2乗検定による分布の比較を行い,有意水準を両側5%とした. 結果: 深夜勤務後の疲労が翌日までに回復すると回答した者は32人,2日以上と回答した者は20人であった.検定の結果,深夜勤務後の疲労回復が2日以上と回答した群では,生活ストレスの解消が不十分であると自覚している者が有意に多かった( p= 0.035).年齢,肥満度,睡眠時間,深夜勤務前の仮眠の有無,生活習慣病リスクの有無,運動習慣については疲労の蓄積との間に有意な関連を認めなかった.また,ストレス解消手段と日常ストレスの解消については,日常ストレスの解消が不十分と回答した群では,ストレス解消手段としてお酒 ( p= 0.045),タバコ ( p= 0.030) を選択した者の割合が有意に多かった. 考察: 本研究では,日常ストレス解消の自覚度と,疲労の回復期間に関連が認められた.また,ストレスの解消は,解消手段により効果が異なっており,個人に合わせたメンタルケアの必要性が示唆された.