平成23年3月に発生した東日本大震災により,東京電力福島第一原子力発電所において事故が発生し,周辺地域で生産された食品が放射性物質により汚染される事態となった.本研究では,現行の基準値施行後において,各地方自治体を中心に実施されている食品の出荷前における放射性セシウム検査体制の実効性について検証することを目的とし,放射性物質による汚染が予想される地域産食品の流通段階での買上げ調査を実施した.NaI(Tl)シンチレーションスペクトロメータを用いたスクリーニング検査およびゲルマニウム半導体検出器ガンマ線スペクトロメータを用いた確定検査により,流通食品1,735試料(平成24年度)および1,674試料(平成25年度)について放射性セシウム濃度を調査した.その結果,放射性セシウムの基準値(100 Bq/kg)を超過した試料数は,平成24年度は3試料,平成25年度は4試料(両年度ともに基準値超過率は0.2%)であり,各地方自治体における出荷前食品のモニタリングが効果的に機能していることが確認された.