2012年11月から2013年8月に牛腸内容物から分離された大腸菌が保有する病原遺伝子について,マルチプレックスPCR法を用いた包括的実態調査を行った.ウシ100頭中79頭から病原遺伝子を持つ下痢原性大腸菌延べ180株が検出され,そのうちウシ32頭から検出された45株が腸管出血性大腸菌(STEC)であった.半数以上のウシが astA を保有しており,次いで, cdt , cnf , stx2 の順で保有率が高かった(>30%).今回の調査ではSTh 遺伝子,LT遺伝子, invE , aggR , afaD は検出されなかった.STEC 45株中6株は stx1とstx2 を同時保有し,19株は stx2 を単独で保有していた.その他17株はベロ毒素遺伝子に加えて,STp遺伝子, astA あるいは cdt を同時保有していた.STEC以外の135株は,STp遺伝子保有の腸管毒素原性大腸菌18株, eae 保有の腸管病原性大腸菌25株,およびその他の下痢原性大腸菌92株に分類された.OおよびH血清型が決定できた48株中,3株のO157 : H7は患者由来株と同様に stx2 と eae を保有していた.